反町さんとの質疑応答
「まず、北京オリンピックを見た人いる?ほとんどだね。時差の関係もあって見た人はかなり多いね。残念ながら全敗。アジアの国々が各グループに1チームずつ入って計12試合行った。韓国がホンジュラスに勝利した以外は勝ちがない。こう見ると日本の問題点はもちろんあるが、アジア全体の問題でもあることに注意する必要がある。次のオリンピックはロンドンで1989年生まれの人が対象になるが、その次は1993年以降に生まれた人。つまり、君たちだね。もしかしたら東京で行われるかもしれない。君たちが中心選手である可能性も十分にある。だから明日から気合を入れろ、というわけではなくて、日々のトレーニングや生活を積み重ね、それを試合で出せるかどうかが大切。今ここでやっていることは非常にレベルが高い。ただし、上には上がいる。海外にはもっとすごいやつがいる。ナイジェリア、オランダにはチャンピオンズリーグで何点もとっているやつがいて、そいつらと戦わなければならなかった。メッシのことを考えると君たちは4,5年後には6,7万人の前でやる可能性だって十分にある。環境はめぐまれている。ご飯もつくってもらえて、ユニフォームまで洗ってもらえる。そのことには感謝しつつ生活すること。」
Q:「世界との大きな差は具体的に何ですか?」
A:「ポゼッション率もシュート数も全試合日本のほうが上だった。数字だけを見たら日本が良かったかのように見えるが、現場では違う。スピードが違う。走るスピード。特に動き出しのスピードはね。判断のスピードが速い。切り替えが速い。ボールを奪っての2,3歩が速い。うしろから戻ってきながら守備をするのも速い。パススピードも速い。アルゼンチンのマスケラーノはパスコースが狭くても15m程度のパスを強烈に出す。ボールを受けてからのターンもめちゃくちゃ速い。サッカーはスピード勝負。どんな状況でもあわてず判断するスピードが大切。身体をぶつけられたら日本は弱い。ボディバランスや体幹を鍛えることは必要。いろんな所から足が出てくる。Jリーグの感覚じゃ駄目だね。抜いたな、とかここはパスが通るだろ、という所でカットされる。ちょっとの差が積もり積もって大きな差になっているという感じだね。」
Q:「センターバックに求めるのは何ですか?」
A:「まずは安定してボールをさばけること。攻撃の第一歩だからね。もちろん、ディフェンスとしての力強さは言うまでもないよ。ボールを奪われた時のカウンターに対する準備も必要。最初のパスが相手にビッグチャンスとなるようでは駄目で、自分達が攻撃しているときにミスの予測、準備をしておく。これを90分間集中して行う。最前列から最後列まで、きめ細かい指示をすること。アカデミーは全体的にGKはよく声を出しているが、他はほとんどない。もっと周りが声を出すこと。サイドバックも。レベルが高くなればなるほど1点勝負。取られたら取り返せば良いというレベルではない。ちょっとしたミスが勝負を決めてしまう。」
Q:「U-23でプロ意識が高いプレーヤーは誰ですか?」
A:「何を持ってプロ意識かというのはあるが。チームがスタートした頃はプロとしての意識はそう高くはなかった。本大会に近づくに連れてそういう意識が高くなってきた。メンタリティとかハードワークとか、今のサッカーに求められている資質がないと最後の18人には選ばれない。ただ、最初からプロ意識を持っていたのは本田(圭)かな。」
Q:「全試合で相手チームよりシュート数が多くて得点を取れなかったのはなぜですか?」
A:「決定機を活かす能力がなかった。決定機を多くつくるためにトレーニングしてきた。身長で勝てないからセンタリングは低めで勝負とか。飛び込む時の気力、迫力が少し足りなかった。誰かがシュートをうったときにつめるやつが少ない。執着心かな。僕の意見では、得点のほとんどはGKがはじいたとか、ディフェンスに当たったとか、競り合いでこぼれたとか、そういうものを決めるのが多い。そういったプレーヤーを選んだつもりだった。日本のレベルでは通用したが、世界では通用しなかったということ。執着心がとにかくなかったね。毎日、「絶対決めてやる」という強い気持ちでトレーニングやらないと。」
Q:「日本のGKと世界のGKとの差は何ですか?」
A:「世界のレベルは高い。日本は相当頑張ってやらないと。ナイジェリアのGKなんかはそこまで身長は高くなかったけど、ゴールマウスを守る技術はすばらしい。冷静にさばけるし、守備範囲が広い。僕はツェフが一番好き。勇気、反応、責任感が素晴らしい。」
Q:「本田(圭)が海外に行って変わったことは何ですか?」
A:「勝負に対する気持ち。Jリーグは少し生ぬるい。負けてもバスに乗って簡単に帰ることができる。海外ならモノを投げられる。サポーターにそうなれ、と言っているわけじゃないよ。勝負に対する執着心の問題。本田は代表の仲間に対する言葉に重みが出てきた。海外に行かなければ得られなかっただろう。森本も同じ。点を取る取らないのこだわりは人一倍出てきた。アメリカ戦で負けたときの夜3時に森本は悔しくて眠れずに、マウスピースをつけて安田にこう言ったらしい。「思いっきりおれをなぐってくれ!」と。本当の話だよ、これ。中田英寿がペルージャで成功したのは、初戦のゴールがあったからだと思う。あそこには、勝負に対するこだわりがあった。」
Q:「日本人が海外で通用するには何をすればよいですか?」
A:「相手にとって一番危険なプレーができるかどうか。前線だとゴールを常に意識すること。日本人はターンできるのにバックパス出したり、シュートできるのにしなかったりする選手が多い。」
Q:「日本は何を改善すればよいですか?」
A:「日本の良さを前面に出して戦うこと。ボール保持者に対して選択肢を増やす。何度も動きなおす。日本人はターンが素早く、俊敏性が高い。ターンした後に素早く出て行ける。ボールを動かすテクニックもある。今までやっていることを向上心をもってやることにつきるよ。ゴールを入れることに関して。はずして、ニコニコしているようでは駄目。バルセロナでもアカデミーと同じようなトレーニングをしている。ただし、得点に対する執着心が違う。シュートをはずしてサンキューとかオーケーとか言い合っているようでは駄目。」

文・構成 樋渡 群









