高速道路から太平洋を見ると、波が荒れている。台風の影響が懸念されたが、郡山の西部サッカー場に着いてみるとほとんど風もなく青い空がいっぱいに広がっていた。郡山の喜久田JFCの黒澤さんの呼びかけで県中トレセンU-11 とU-12の少年22名、コーチ20名が集まってくれた。講師はクロード・デュソー テクニカルアドバイザー、島田信幸ヘッドコーチが勤めた。
トレーニングに入る前に、参加していただいた指導者の皆さんにこの年代のトレーニングの目的を伝える。
・できるだけボールにたくさん触れること
・ボールを使ってたくさん走ること
子ども達を5人組4グループに分け、20m×20mのグリッドを4セットつくり、各グループはその中でドリブル。ボールは各自一個ずつ。常に相手を意識して、ボールは次のプレーがしやすい場所に置く。ワンタッチ目とツータッチ目の間にたくさんステップを踏むのではなく、各ステップごとにボールにタッチする習慣をつける。トン、トン、トン、トンというリズムでタッチする。顔もしっかり上げてできるだけ遠くを見る。徐々にスピードを上げていく。5人が固まりすぎないように、目いっぱい広がりを持ってプレーする。どこに大きなスペースがあるか把握する。次にリフティング。足首を曲げてしまうと、ボールに回転がかかって自分の方に戻ってくる。これはリフティングの回数を増やすには良いかもしれないが、リフティングはボールの芯を捕らえるキックトレーニングでもあるので、ボールが回転しないように足首をしっかりまっすぐ伸ばす。

コートを移動して、スラロームドリブル。この年代はボールを使えばそれがコーディネーショントレーニングになる。さまざまなステップの踏み変えを要求しながら、相手の逆を取る動きを入れる。右斜め前へ行くために、しっかりと左に体重をかけて相手の逆を取る動作を意識させる。ヴァリエーションは工夫次第で幾通りも考えられる。右に行くと見せかけて左足のアウトで外に出て、さらに同じ足のインサイドで切り返すなど。成功し始めたらスピードを上げる。長い列を作って待ち時間が長くならないように、3,4人一組で繰り返し行う。

元いた正方形のグリッドに戻り、手でパス交換。4,5人にボール2つで行う。ボールを受ける時にしっかりボールに寄ること。止まってもらっていたら、相手(ディフェンダー)にインターセプトされてしまう。投げた後は広いスペースへ動く。パスして止まっていたら相手(ディフェンダー)もその位置に留まり、フリーになれない。パス交換は出し手と受け手の準備が整って初めて成り立つ。自分がパスを出したい時に出すと意思の疎通が不足してボールを失う可能性が高くなる。しっかりと前に寄る(ボールを要求する)動作を情報として味方に発信しなくてはならない。手の後は、足に戻してパス交換。考え方は手でパスした時と全く変わらない。ただし、パスは短く、弱くならないように。芝スレスレのボールをバウンドさせないように強く蹴る。これも相手に取られないためのテクニック。
ビブスの色を意識させてパス交換。緑、白、赤、黒。最初は同じグループ内でパス交換を行うが徐々に要求を難しくする。緑と白がパス交換。赤と黒がパス交換。次に、緑は白へ、白は赤へ、赤は黒へ、黒は白へパス交換。あらかじめ出す味方を把握する。コートがどんどん広くなるためにスペースがどこにあるかも把握しなければいけない。簡単なエクササイズではない。
3対3+フリーマン(1人or2人)。これまでのエクササイズで要求されたことをフル活用する。
・ボールに寄る
・コントロールする前に周りをはやく観る
・出したら広がる
・相手ディフェンダーの間に顔を出す
・フリースペースを探す、使う
・相手からタイミングよく離れる
・強いパス
・フェイントで相手の逆を取る
コントロール-パスドリル。パス交換トレーニングにおける最も大切な要素にフォーカス。つまり、ボールをもらう前にタイミングよくボールに寄ること。これを三角形のトライアングルを作って行う。ボールが2人の間を移動している時に、3人目の選手は「見せかけの動き」を入れてボールに寄り、コントロール、パス。「見せかけの動き」とは完全に味方から視野を離し、あたかも別の場所へ行くふりをしておいて、突然スピードアップして元いた位置に戻り、味方とアイコンタクトを交わしボールを受け取ることである。味方を見ながらバックステップをして、ターンしてボールをもらうことは「見せかけの動き」とは言わない。なぜなら、相手(ディフェンダー)がパスの出し手を容易に察知できてしまうからである。「見せかけの動き」とボールをもらいに行くときのスピードには緩急が必要である。
シュートドリル。7,8mボール運びをした後、10m程度の距離のシュート。10名ずつ半分にわけ、2つのグループが対角線の位置を取る。両側から同時にスタート。このエクササイズもまずはたくさん繰り返すものなので、待ち時間をできるだけ短くする。目的はシュートの正確性。最初はゴールキーパーに向けてうつ。立ち足、振りぬいた足がきちんとキーパーに向けられていること。次に、好きな場所を狙う。要求も難しくしていき、ドリブルではなく、対角に位置する仲間へパス。ボールにしっかり寄りながらコントロールしてシュート。同じサイドにいるプレーヤーがドリブルを開始して、中にコントロールした瞬間にシューターはスタートしてスペースで受けてシュートする。いかに、空いたスペースを有効に使うか。早くスタートしすぎるとオフサイドになるし、フォワード同士が平行に並んでしまい、相手にカットされたら2人は置き去りにされてしまう。コントロールをミスしてセンタリングの位置にいるにもかかわらずシュートしてしまう選手に対しては、「いいか、これはシュート練習だぞ。確かに君はパスが悪くてここでボールをキープせざるを得なかった。しかし、この角度でシュートが決まると思うか?それよりも中に味方がいるだろう?パスしてごらん?」とできるだけオーガナイズにとらわれずサッカーの現実性を意識させる。
最後はコート2つに分けて6対6のゲーム。コートの大きさは正規のグラウンドの8分の1。指導者の方にも入ってもらった。丁寧にパスを出す。スペースを広く使うことにフォーカス。子ども達は全ての要素をいきなり表現はできないが、フリーズをかけると、自分たちで考えて動く。つまり、頭では理解しているということ。どこがフリーなのか、どこに動けばよいのかわかっているのである。徐々にフリーズされなくても自分から動けるようになるにはもちろん時間がかかる。
子ども達は慣れないトレーニングにもかかわらず、デュソー氏の要求にすぐさま答えようとトライしてくれた。コーチングにしても普段より厳しいことを要求され、さらに厳しい表現で緊張したかもしれない。しかし、最後は子どもらしい笑顔でクリニックが終了した。
トレーニング後は指導者の方々とデュソー氏とのディスカッションがその場で行われた。以下のような質疑応答
Q:この年代はテクニックにフォーカスされるとおっしゃったが、コーディネーションは特別に行わないのか?
A:この年代はボールを扱うことが既にコーディネーショントレーニングになっています。
今日も行いましたが、スラロームドリブルではコーディネーションに不可欠なステップの踏み変えがかなり要求されます。さらに、単なる2人組みのヘディングにしてもボールの軌道をしっかり把握して、それによってステップを踏み変えてボールをとらえないといけません。つまり、ボールを使ってテクニックを磨くことと体をコーディネートすることはほぼ同じ事なのです。
Q:トータルのトレーニング時間は2時間ですが、各エクササイズは何分程度行えばよいのですか?
A:気温にもよりますが、20分から25分が一つの目安になるでしょう。ストレッチや給水タイムもとる必要がありますから30分ごとにエクササイズが変わっていくと考えるとよいのではないでしょうか。給水はトレーニング終了後にしっかりとらせてください。
Q:エクササイズで顔を上げることがかなり要求されていましたが、どの年代から開始すべきなのでしょうか?
A:できるだけ早い年代からスタートするべきです。ポイントはボールを持つ前にしっかり周りを見ておくことです。ボールの移動中に首を振って仲間がフリーになっていることを確認してコントロール、パスする習慣を身につけなくてはいけません。例えば簡単な2人組みのパス交換で受け手が背中を向けたとします。その時、出し手の多くはその背中を向けた選手にボールを出してしまいます。つまり、顔を上げて見ていないのです。このボールを受ける前にしっかりと周りを見るというテクニックは非常に大切で、早いうちから身につけておいてもらいたいです。

西部サッカー場を後にして、夕焼けに照らされた稲穂が黄金色に輝いて、秋風にそよぐ様に見とれていた。緑に覆われた天然芝から美しくのどかな田園風景への変化に少し戸惑ったが、県中の指導者の方々の熱意が積極的なトレーニングへの関わりや質問にもうかがえたことを思い出し、JFAアカデミー福島のコンセプトを少しでも理解していただいた安心感に少しばかり浸った。
最後に、クリニックの準備を滞りなく行っていただいた喜久田JFCを初めとするスタッフの皆様に感謝の意を述べさせていただきたいと思います。ありがとうございました。